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TECHNICAL NOTES

映像技術を、
わかりやすく。

すべてを覚えるための教科書ではありません。「自分の作品はどうなっているんだろう?」と気づくための、小さな技術ノートです。

WHY WE WRITE

作品について、
同じ言葉で話すために。

4Kにする。P3にする。5.1chにする。技術的に「できる」ことはたくさんあります。

しかし、「できる」ことと、「やる意味がある」ことは違います。

われわれは現在の素材と、そこへ至る制作工程を確認したうえで、その作品に必要な技術を考えます。TECHNICAL NOTESは、そのための共通言語をつくるページでもあります。

NOTE 01 / COLOR

Rec.709とは?

映像にも「使える色の範囲」があります。

Rec.709は、テレビ、Blu-ray、一般的なSDR映像などで広く使われている、映像の代表的な色の基準です。

映像には「どこからどこまでの色を使うか」という決まりがあります。まずは、規格によって扱える色の範囲が違うことだけ見てみましょう。

Rec.2020
DCI-P3
Rec.709
概念図:外側へ行くほど、扱える色の範囲が広くなります。実際の形や面積比ではありません。

では、実際の色域はどう見えるのでしょう?

人間が見分けられる色を位置関係として表したものの一つが、CIE 1931 xy色度図です。その中に、Rec.709、DCI-P3、Rec.2020の原色を三角形として重ねると、違いが見えてきます。

CIE 1931 xy色度図とRec.709、DCI-P3、Rec.2020 CIE 1931 xy色度図上に三つの色域三角形を重ねた説明図 Rec.2020 DCI-P3 Rec.709 xy 00.20.40.6 00.20.40.60.8
色域三角形は各規格のxy原色座標を基準に表示。背景のスペクトル色と馬蹄形は理解を助けるための近似表現です。

広ければ、きれいなのでしょうか?

必ずしもそうではありません。 色域が広いことと、映像が美しいことは同じではありません。

大切なのは、元の映像がどのような情報を持っていて、最終的にどこで見るのか。それに合った色の管理をすることです。

NEXT NOTE02|DCI-P3とは?映画館の映像は、テレビと何が違うのでしょう?

NOTE 02 / DIGITAL CINEMA COLOR

DCI-P3とは?

映画館の映像は、テレビと何が違うのでしょう?

DCI-P3は、デジタルシネマで使われる色域です。Rec.709より広い範囲の色を扱えます。

しかし、映画館の色を理解するには「色域が広い」だけでは足りません。白色点、トーン特性、そして暗い劇場という視聴環境も関係します。

Rec.709TV / Blu-ray / SDR

白色点:D65
SDR暗室マスタリングではGamma 2.4(BT.1886系)が一般的

DCI-P3Digital Cinema

白色点:DCI White
劇場基準のトーン:Gamma 2.6

Display P3 と DCI-P3 は同じではありません。

Macなどで使われるDisplay P3は、P3の原色を使いながら白色点はD65で、トーン特性もDCI-P3とは異なります。「P3」と表示されているから、そのまま映画館用マスターという意味ではありません。

Rec.709をP3にすれば、もっと色豊かになる?

単純に変換しただけで、元の映像になかった色情報が新しく生まれるわけではありません。

では、撮影時にはどんな情報が記録されていたのでしょう。そこで重要になるのが、LOGとGamutです。

NEXT NOTE03|LOGで撮るとは?撮影したときに、映像の可能性はある程度決まっています。

NOTE 03 / CAMERA & RECORDING

LOGで撮るとは?

撮影したときに、映像の可能性はある程度決まっています。

「4K・LOGで撮影しました」だけでは、まだ分かりません。

LOGは、色をきれいにする魔法ではありません。明るいところから暗いところまで、後で調整できる余地をできるだけ残すための記録方法です。

そして、LOGとGamutは別の話です。

LOG / Gamma明るさ・階調をどう記録するか

S-Log3、C-Log2、Log Cなど

Gamutどの範囲の色を扱うか

S-Gamut3.Cine、Cinema Gamut、ARRI Wide Gamutなど

カメラによって、残せる情報は違います。

同じ「4K」「LOG対応」でも、センサー、ダイナミックレンジ、Bit Depth、クロマサブサンプリング、コーデックや圧縮方式などによって、後工程に残る情報と調整の余裕は違います。

たとえば 4K / 8bit / 4:2:04K / 10bit / 4:2:2 は、どちらも4Kですが、カラーグレーディングから見れば同じ条件ではありません。

CAMERAカメラSensor / Lens / Exposure
RECORDING記録LOG / Gamut / Bit Depth / Codec
EDIT編集Timeline / LUT / Export
COLORカラーManagement / Grading
MASTER現在の素材Rec.709 / P3 / Other
われわれが知りたいのは、現在のファイル名だけでなく、カメラから現在のマスターまで映像がどんな道を通ってきたのかです。

完成した映像だけを見ても、分からないことがあります。

4Kのファイルでも制作工程のすべてが4Kだったとは限りません。P3のマスターでも、撮影からP3を前提に管理されていたとは限りません。LOG撮影でも、途中でRec.709へ変換されている場合があります。

カメラ選定、露出、照明などの撮影そのものは、撮影部・DIT・カラリストなど各専門家の領域です。われわれがそれに代わるものではありません。

ご依頼の際には、必要に応じて制作工程を確認します。

すべての項目が分かっている必要はありません。大切なのは、分かっていることと分からないことを整理してから作業を始めることです。確認のため、受注時に制作工程確認シートを使用する場合があります。

「できる」ことと、「やる意味がある」ことは違います。

現在の素材から何ができるのか。そして、何をしない方がよいのか。それを判断することも、われわれの仕事の一部だと考えています。

NEXT NOTE04|DCPとは?映画を「映画館で上映できる形」にする。

NOTE 04 / DIGITAL CINEMA

DCPとは?

映画を「映画館で上映できる形」にする。

完成した映画をMOVやMP4に書き出し、パソコンで問題なく再生できた。では、そのファイルを映画館へ持っていけば上映できるのでしょうか。

映画館には、映画館のための形式があります。それがDCP(Digital Cinema Package)です。

MASTER完成マスター
PICTURE / SOUND / SUBTITLE上映用に整える
DCP上映パッケージ
CINEMA SERVER映画館へインジェスト
SCREEN上映

DCPは「動画ファイル」ではありません。

映像、音声、必要に応じて字幕、そしてそれらを正しく組み合わせて上映するための情報を、デジタルシネマの規格に沿ってまとめたパッケージです。

2Kと4Kがあります。

4K DCPにすれば、元の作品になかった細部が新しく生まれるわけではありません。ここでも大切なのは、「4Kにできるか」ではなく「4Kにする意味があるか」です。

フレームレートも確認します。

映画では24fpsが代表的ですが、制作素材には23.976、25、29.97などもあります。わずかな差でも長編では上映時間や音・字幕との同期に関わるため、元作品の状態を確認します。

色も映画館用の形になります。

DCPの映像はデジタルシネマで規定されたXYZ色空間として収録されます。ただし、Rec.709素材をDCPにしただけでP3の色情報が増えるわけではありません。DCP化と、作品の色を作り直すことは別の問題です。

「DCPができた」と「正しく上映できる」は同じではありません。

映像、色、フレームレート、音声チャンネル、字幕、映画館へのインジェスト。作るだけでなく、正しく上映できる状態まで確認することが大切です。

NEXT NOTE05|2chと5.1ch音は、チャンネル数を増やせば良くなるのでしょうか?

NOTE 05 / SOUND

2chと5.1ch

音は、チャンネル数を増やせば良くなるのでしょうか?

現在の映像制作で「2chステレオ」といえば、通常はL(左)/R(右)の2チャンネルです。

ただし、映画音響の歴史では「ステレオ」という言葉は少し複雑です。スクリーン側のL/C/Rというフロント3chや、2chへマトリックス・エンコードして上映時にL/C/R/Sへ展開するDolby Stereoなど、さまざまな方式が使われてきました。

現在の2chステレオ
SCREEN
LR
観客
フロント3ch
SCREEN
LCR
観客
5.1ch
SCREEN
LCR
観客
LsLFERs

なぜ映画にはセンターがあるのでしょう?

台詞をセンターチャンネルへ置くことで、客席の左右どこに座っていても、声をスクリーン上の人物の位置から感じやすくなります。映画音響では、音を広げるだけでなく、スクリーンと音を結びつけることが重要です。

5.1chの方が2chより良い?

必ずしもそうではありません。 きちんと作られた2chは、それだけで完成した音響です。チャンネルを増やしただけで、そこになかった音響設計が生まれるわけではありません。

擬似3ch・擬似5.1chという方法もあります。

2chからセンターやサラウンド成分を作り、複数チャンネルへ展開するアップミックスがあります。古い作品の再上映などで意味を持つ場合もありますが、最初から5.1chとして設計された音と同じではありません。

また、元の台詞・音楽・効果音などの素材が残っていれば、2ch完成マスターからのアップミックスではなく、素材から新しい5.1chミックスを作れる可能性もあります。

逆に、5.1chを2chにすることもあります。

配信、テレビ、Blu-rayなどのためにダウンミックスする場合、センター、サラウンド、LFEをどう扱うかを考え、元のミックスの意図をできるだけ守ります。

われわれが確認したいのは、「何chあるか」だけではありません。

最初から5.1chとしてミックスされたのか。オリジナル素材から再ミックスされたのか。2chからアップミックスされたのか。音も、現在のスペックだけでなく「どう作られてきたか」を見ます。

音も、「できる」と「やる意味がある」は違います。

NEXT NOTE06|QCとは?「書き出しが終わった」と「作品が完成した」は、同じでしょうか?

NOTE 06 / QUALITY CONTROL

QCとは?

「書き出しが終わった」と「作品が完成した」は、同じでしょうか?

映像を書き出した。DCPも完成した。エラーも出ていない。そこで、最後にもう一度確認します。それがQC(Quality Control)です。

映像色・明るさ音声チャンネル音量・音切れ字幕同期納品仕様

数値が正しくても、作品として正しいとは限りません。

ソフトウェアで確認できることに加えて、最後は映像を見て、音を聴きます。一瞬の乱れ、字幕の違和感、台詞の聞こえ方など、規格上は間違っていなくても気になることがあります。

作品の仕様や届け先によっては、試写室や劇場環境での確認をご提案します。特に4Kや5.1chでは、データ上の確認と、実際の上映環境での確認は同じではありません。

QCは、作品を作り直す工程ではありません。

問題が見つかったら、撮影、編集、カラー、音、マスター制作のどこで起きたのかを確認してから判断します。

「書き出せた」ではなく、
「正しく届けられる状態になった」ことを確認する。
われわれは、そこまでを完成だと考えています。

FROM TECHNICAL NOTES TO YOUR PROJECT

全部を理解する必要はありません。

「自分の作品はどうなっているんだろう?」と思ったら、それが最初の確認です。分からないところから、一緒に整理します。

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